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内科の業界動向2025|診療報酬改定と2025年問題から見る経営の生き残り策

内科の業界動向|2024年以降の市場変化と経営の最前線を徹底解説

2024年度の診療報酬改定を経て、内科業界は大きな転換期を迎えています。生活習慣病管理料の再編や医療DXの推進は、これまでの「待ち」の経営を根底から覆しました。本記事では、最新の市場規模や診療報酬改定の具体的な影響、および2025年問題を見据えた内科クリニックの生存戦略を、膨大な統計データに基づき徹底解説します。

POINT2024年度の診療報酬改定により、内科業界は従来の「薬を出すだけ」の経営モデルが通用しなくなり、専門性とDXを軸とした付加価値の創出が生存の必須条件となっています。


内科業界の現状と市場規模

内科業界は、日本の医療提供体制の中で最も施設数・患者数が多く、地域医療の要です。しかし、近年の動向を見ると、単なる「一般内科」としての運営は限界を迎えつつあります。

国内の内科クリニック施設数と推移

厚生労働省の「医療施設調査」によると、一般診療所のうち「内科」を標榜する施設数は約6万施設以上にのぼり、全診療所の約6割を占めています。

施設数自体は微増傾向にありますが、その内訳は大きく変化しています。都市部ではビル診(ビル内クリニック)による過密化が進む一方、地方では高齢化に伴う閉院と、大手医療法人による承継・統合が進んでいます。いわば、クリニックの「二極化」が業界動向の大きな特徴です。

ビル診(ビル内クリニック)

オフィスビルの1フロアや複数フロアを活用して開設される診療所のこと。駅前の好立地を確保しやすい一方、賃料が高く、競合他科との差別化が必要になる開業形態です。

内科診療における市場規模と患者数の動向

内科の市場規模は、日本の概算医療費約46兆円のうち、医科診療所分が約10兆円超であり、その大部分を内科系疾患が占めています。

患者数については、高齢化に伴い「生活習慣病(高血圧、糖尿病、脂質異常症)」を抱える患者数は増加の一途を辿っています。しかし、1人あたりの受診頻度は減少傾向にあります。これは、リフィル処方箋の普及や、患者側のコスト意識の高まり、そして健康意識の向上による受診控えが影響しています。

診療科目別の構成比と一般内科の位置づけ

内科は、小児科や皮膚科、整形外科と比較して「再診率」が高いのが特徴です。以下の表は、主要診療科目の経営的特徴を比較したものです。

項目 一般内科 整形外科 小児科 皮膚科
患者層 高齢者が中心 全世代 子供 全世代
再診率 非常に高い 高い 低い 中程度
設備投資 中規模 大規模 小規模 小規模
経営の安定性 高い 高い 変動が大きい 中程度

一般内科は、慢性期疾患を抱える患者を抱えることで収益の安定性は高いものの、後述する診療報酬改定の影響を最も受けやすい立ち位置にあります。


2024年度診療報酬改定が内科経営に与えた影響

2024年度(令和6年度)の診療報酬改定は、内科クリニックにとって「過去20年で最大級のインパクト」と言われています。

生活習慣病管理料の見直しと算定要件の厳格化

今回の改定で最も大きな変更点は、従来の「生活習慣病管理料」が(Ⅰ)と(Ⅱ)に再編され、さらに「療養計画書」の作成と患者への署名が必須化されたことです。

特に、高血圧、糖尿病、脂質異常症の3疾患が「特定疾患管理料」の対象から除外され、原則として「生活習慣病管理料(Ⅱ)」へ移行することが求められました。これにより、多くのクリニックで事務負担が増大し、算定要件のハードルが上がっています。

これまでの内科経営を支えていた「特定疾患管理料」から主要な3疾患が外れたことは、収益面に直撃しています。

特定疾患管理料の対象疾患除外とそのインパクト

  • 旧体制:処方箋料+特定疾患管理料
  • 新体制:生活習慣病管理料(検査代の包括・非包括による差異)

この変更により、検査を頻回に行うクリニックでは包括払いによる収益悪化、逆に検査が少ないクリニックでは管理料の単価下落という、どちらに転んでも厳しい状況が生まれています。

外来後発医薬品使用体制加算とコスト管理の変化

後発医薬品(ジェネリック)の採用率に応じた加算も厳格化されました。また、長期収載品(先発品)を患者が希望した場合の「選定療養」の仕組みが導入されたことで、窓口での説明負担が増加しています。内科は処方箋発行数が多いため、このオペレーションの成否が患者満足度とスタッフの離職率にまで影響しています。

【独自分析】内科クリニックの約7割が減収となった背景

2024年6月の施行後、多くの内科クリニックから「減収した」という声が上がっています。その背景には、単なる管理料の下落だけでなく、以下の複合的要因があります。

  1. 特定疾患処方管理加算の廃止:処方箋に関連する細かな加算がカットされた。
  2. 事務コストの増大:療養計画書作成に要する時間(1人あたり5〜10分)が、診察回転率を低下させた。
  3. 検査実施の抑制:包括払い(生活習慣病管理料Ⅰ)を選択した場合、検査を行うほど利益が削られる構造になった。
POINT2024年度の診療報酬改定により、内科クリニックは単なる「処方箋発行」から「療養指導の実践」へと役割の転換を迫られ、事務負担増と収益減の二重苦に直面しています。


内科業界が直面する4つの構造的課題

内科経営を取り巻く環境は、制度変更だけでなく、社会構造の変化という大きな壁にぶつかっています。

2025年・2040年問題|高齢者人口のピークと需要の変容

2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、2040年には高齢者人口がピークを迎えます。
内科にとって、これは一見「患者増」のチャンスに見えますが、実態は異なります。高齢者の多併存(マルチモビディティ)化が進み、1回の診察に要する時間が長くなる一方で、外来通院が困難な層が増加するため、従来の「外来中心モデル」は維持できなくなります。

マルチモビディティ

1人の患者が複数の慢性疾患を同時に抱えている状態のこと。高齢者では高血圧、糖尿病、心疾患、腎疾患などを併発することが多く、総合的な管理が求められます。

医療従事者の不足と働き方改革関連法への対応

2024年4月から医師の働き方改革が本格始動しました。勤務医の残業規制は、巡り巡って「開業医の役割」を変えています。

  • 基幹病院の逆紹介推進
  • 夜間・休日の救急対応の地域分担

これにより、内科開業医は「より重症度の高い患者の管理」や「24時間の相談体制」を求められるようになっています。

医療費抑制政策に伴う「1人あたり診療単価」の下落

国は社会保障費の抑制のため、薬価の引き下げや診療報酬の合理化を継続しています。結果として、1人の患者から得られる平均単価は長期的に低下傾向にあります。量をこなす(薄利多売)か、質を高める(高付加価値)かの選択を迫られています。

都市部における内科クリニックの過密化と競合激化

駅前や大規模マンションの周辺では、内科クリニックが乱立しています。

  • ドミナント戦略をとる大手医療法人の参入
  • 専門特化型(内視鏡、糖尿病など)の台頭
  • 土日祝日診療、20時までの夜間診療を武器にする新興クリニック

これらの競合に対し、昔ながらの「町のお医者さん」という立ち位置だけでは、新規患者の獲得が極めて困難になっています。

都市部では内科クリニックの供給過多により、特徴のない一般内科は新規患者の獲得が極めて困難になっています。差別化戦略が生存の必須条件です。


内科のDX推進とテクノロジー動向

課題を解決する唯一の手段として注目されているのが医療DX(デジタルトランスフォーメーション)です。

オンライン診療の普及率と診療報酬上のインセンティブ

オンライン診療は、コロナ禍を経て恒久化されました。内科においては、特に慢性疾患の安定期患者との相性が良く、2024年度改定でも「情報通信機器を用いた診療」の点数が維持・調整されています。通院の負担を減らすことで、働き盛り世代の患者の離脱を防ぐ効果があります。

AI問診・クラウド型電子カルテによる業務効率化の重要性

療養計画書の作成負担を軽減するため、AI問診の導入が加速しています。

  • 患者が来院前にスマホで症状を入力
  • 電子カルテに自動反映
  • 医師は内容を確認し、追加質問のみで完結

これにより、診察時間を「患者との対話」に集中させることが可能になります。

AI問診システムの仕組み

患者がスマートフォンやタブレットで症状や既往歴を入力すると、AIが医学的知識に基づいて追加質問を自動生成。その結果を電子カルテに取り込むことで、医師の問診時間を大幅に短縮できるシステムです。

マイナ保険証利用の義務化と医療DX推進体制加算

「医療DX推進体制加算」が新設され、マイナ保険証の利用実績や電子処方箋の導入が点数化されました。これは単なる加算取りだけでなく、他院での処方内容や検査結果をリアルタイムで把握できるという「医療の質」の向上に直結します。

PHR(パーソナルヘルスレコード)活用による予防医療への展開

ウェアラブルデバイスやスマホアプリで管理された患者の日常データ(血圧、歩数、血糖値)を診療に活かす動きが広がっています。内科医が「薬を出す人」から「健康の伴走者(ヘルスコーチ)」へと役割を変えるための重要ツールです。


内科開業医の収支・経営実態

「内科は儲かる」というイメージは過去のものになりつつあります。最新のデータから実態を浮き彫りにします。

内科開業医の平均年収と損益分岐点の目安

厚生労働省の「第24回医療経済実態調査(2023年実施)」によると、一般診療所(個人経営)の院長の平均年収(専従者給与含む)は約2,500万〜3,000万円程度です。

しかし、ここから借入金の返済や税金を支払うため、手元に残るキャッシュはそれほど多くありません。内科クリニックの損益分岐点は、一般的に「1日あたりの来院患者数40〜45人」と言われています。これを下回ると、人件費や家賃の支払いが苦しくなります。

内科と外科の年収比較|なぜ外科の方が高いのか?

統計上、外科系のクリニックの方が収益性が高い傾向にあります。

診療科 1人あたり単価 処置・手術による加点 設備投資額
内科 中(約6,000〜8,000円) 少ない 中程度
外科 高(約10,000円〜) 多い(手術・処置) 高い

外科系は日帰り手術などの高単価な処置が含まれるため、1人あたりの単価が高くなります。一方、内科は「診察と処方」が中心のため、数をこなす必要があります。

「内科は儲からない」と言われる理由とコスト構造の分析

内科経営が苦しくなっている最大の要因は「経費の増大」です。

  1. 人件費の騰貴:看護師や医療事務の採用コスト、給与水準の上昇。
  2. ITコスト:電子カルテ、予約システム、Web問診などの月額保守料。
  3. 消耗品・光熱費:物価高騰による医療資材の値上げ。

売上が診療報酬でコントロールされている(値上げできない)中で、コストだけが上昇しているため、利益率が圧迫されています。

POINT内科クリニックは診療報酬で収入が固定される中、人件費・ITコスト・物価高騰により経費が増大し、利益率の圧迫が深刻化しています。コスト管理と効率化が経営の生命線です。

内科開業における初期投資と資金調達の最新トレンド

内科の新規開業には、一般的に5,000万〜8,000万円程度の資金が必要です。最近では、過剰な医療機器を導入せず、内装とITインフラに投資を集中させる「ミニマル開業」や、初期投資を抑えられる「クリニック継承(M&A)」を選択する医師が増えています。


これからの内科に求められる専門分化と多角化

生き残るためには、従来の「なんでも診る内科」からの脱却が必要です。

一般内科から「専門内科(糖尿病・循環器等)」へのシフト

患者は「風邪なら近所の内科」へ行きますが、「生活習慣病をしっかり治したい」ときは「糖尿病専門医」を探します。

  • 標榜に専門性を明記
  • 専門医としてのエビデンスに基づいた指導
  • 専門の検査機器(頸動脈エコー、ABI、迅速血糖測定器など)の充実

このように「特定の領域で選ばれる理由」を作ることが、集患の鍵です。

在宅医療・訪問診療への参入障壁と収益性

外来患者の減少を補うため、訪問診療へ参入する内科が増えています。在宅時医学総合管理料などの評価が高いため、効率的に回ることができれば高い収益性が見込めます。ただし、24時間対応の負担や、ケアマネジャーとの連携など、外来とは全く異なるオペレーションが求められます。

在宅医療は高収益が見込める一方、24時間365日の対応体制構築や、多職種連携の複雑さなど、外来診療とは全く異なる経営ノウハウが必要です。

自由診療(自費診療)の導入|健診・予防・点滴療法の有効性

保険診療の枠組みに依存しない収益源の確保も重要です。

  • 自費健診:企業の定期健診の受託
  • 予防接種:インフルエンザ以外のワクチン(帯状疱疹、肺炎球菌など)
  • 点滴・栄養療法:高濃度ビタミンC点滴、マイヤーズカクテルなど

これらはキャッシュフローの改善だけでなく、健康意識の高い自由診療層との接点構築に役立ちます。

地域包括ケアシステムにおける内科医の役割と連携モデル

内科医は「地域のゲートキーパー」としての役割を期待されています。近隣の基幹病院、介護施設、訪問看護ステーションとの顔の見える連携を築くことで、紹介患者の流れを太くし、地域に根ざした経営を安定させることができます。


内科クリニックの生き残り戦略と今後の展望

激動の時代、どのようなクリニックが勝ち残るのでしょうか。

かかりつけ医機能の強化と患者エンゲージメントの向上

「かかりつけ医機能報告制度」の開始により、国はかかりつけ医の定義を明確化しようとしています。
単に薬を出すだけでなく、

  • 休日・夜間の対応(連携含む)
  • 入退院時の支援
  • 多職種との情報共有

これらを実践し、「この先生なら安心だ」という患者エンゲージメント(愛着・信頼)を築くことが、最大の競合対策になります。

患者エンゲージメントとは

患者が医師やクリニックに対して感じる信頼感・愛着・満足度の総合的な指標。エンゲージメントが高い患者は継続受診率が高く、他院への流出が少ないため、安定経営の基盤となります。

M&Aによる事業承継・クリニック統合の増加背景

後継者不在のクリニックと、新規開業を目指す若手医師をマッチングするM&Aが活発です。ゼロから立ち上げるよりもリスクが低く、既存の患者基盤を引き継げるメリットがあります。また、複数のクリニックを運営する「医療法人のグループ化」による規模の経済(資材の共同購入、事務の共通化)も進んでいます。

次世代型内科クリニックに求められる「付加価値」とは

今後のキーワードは「UX(ユーザーエクスペリエンス:顧客体験)」です。

  • 待ち時間が極めて少ない(予約・問診の自動化)
  • 説明が分かりやすい(動画やタブレットの活用)
  • アプリを通じた健康管理アドバイス
  • 清潔でホスピタリティの高い空間

「病気を治す」のは当たり前であり、その「プロセス」に価値を感じてもらえるクリニックが、令和の時代の勝者となります。

POINT次世代の内科クリニックは「医療の質」に加えて「患者体験(UX)」の向上が必須。待ち時間短縮、分かりやすい説明、デジタルツールの活用により、患者に選ばれ続ける価値を提供する必要があります。


内科の業界動向に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 内科と外科、どちらが開業後の経営が安定しますか?

A. 短期的には外科、長期的には内科です。
外科は処置料により収益が上がりやすいですが、院長の加齢とともに手術等のスキル維持が課題になります。内科は再診患者を積み上げる「ストック型ビジネス」の側面が強いため、一度軌道に乗れば長期間にわたって経営が安定しやすい傾向にあります。

Q2. 内科クリニックの収入が減っている主な原因は何ですか?

A. 診療報酬の構造変化とコスト増です。
2024年度の改定で、生活習慣病管理料の算定が複雑化したことや、特定疾患管理料の対象疾患除外が大きく響いています。また、看護師不足による人件費の高騰が、売上の減少以上に利益を圧迫しているのが現状です。

Q3. 医師にとって一番きつい診療科と言われるのはどこですか?

A. 精神的・肉体的負荷で見方が異なりますが、内科は「対応の幅広さ」がきついと言われます。
外科は手術という肉体的・精神的負荷がありますが、内科(特にかかりつけ医)は、患者の全身状態、家庭環境、終末期対応まで幅広くケアする必要があり、マルチタスクな能力が常に求められる点が負担となります。

Q4. 医療業界の今後の課題として最も警戒すべきことは?

A. 患者の減少と、医療提供体制の集約化です。
人口減少社会において、患者数は確実に減り始めます。国は医療機関を「集約化・重点化」する方針を打ち出しており、特徴のない小規模クリニックが淘汰されるリスクを最も警戒すべきです。

Q5. 内科開業の損益分岐点を下げるための対策はありますか?

A. 固定費の削減と、IT活用による人件費比率の適正化です。
具体的には、過剰な広さの物件を避ける、高額なリースを組まない、自動精算機やWeb問診を導入して受付スタッフを最小限にするなどの対策が有効です。また、リフィル処方箋を戦略的に使い、事務負担を調整することも重要です。


まとめ|激変する内科業界で勝ち残るための指針

内科の業界動向を俯瞰すると、2024年は「モデルチェンジ」の年であることが分かります。

POINT

  • 診療報酬改定への適応:生活習慣病管理料(Ⅱ)へのスムーズな移行と、事務フローの改善。
  • DXの徹底:マイナ保険証、AI問診、電子処方箋の導入による効率化。
  • 専門性の明確化:一般内科+αの強みを持ち、患者に選ばれる理由を作ること。
  • 地域連携:在宅医療や病院連携を通じた地域包括ケアへの参画。

これらの要素をバランス良く取り入れ、変化に柔軟に対応できるクリニックこそが、今後の厳しい医療環境下でも持続可能な経営を実現できます。ただ「診察する」だけの時代は終わり、これからは「経営デザイン」が問われる時代です。


免責事項
本記事の内容は、2024年時点の公的な統計データおよび診療報酬制度に基づいています。実際の経営判断にあたっては、必ず最新の厚生労働省告示を確認し、税理士や医業経営コンサルタント等の専門家にご相談ください。個別のクリニックの収支を保証するものではありません。

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