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事業譲渡契約書とは?基本事項・記載内容・注意点を網羅解説

事業譲渡契約書は、会社の一部または全部の事業を第三者に譲渡する際に締結される、極めて重要な法的文書です。M&Aの一手法である事業譲渡を円滑に進め、後のトラブルを未然に防ぐために不可欠な役割を果たします。譲渡する資産の範囲、譲渡価格、従業員の処遇といった重要条件を明文化し、双方の権利と義務を明確に定めることが、事業譲渡契約書の最大の目的です。

事業譲渡契約書とは?M&Aを成功に導く羅針盤

事業譲渡契約書は、単に取引内容を記録するだけの書類ではありません。それは、M&Aという複雑な航海を成功に導くための「羅針盤」であり「海図」です。口頭での合意だけでは、「言った・言わない」の争いや認識のズレが生じ、最悪の場合、取引自体が頓挫したり、訴訟に発展したりするリスクがあります。

この契約書によって、譲渡する事業の範囲、資産や負債、従業員の引継ぎ、譲渡価格といった核心部分を法的に確定させることで、当事者双方が安心して取引を進めることが可能になります。まさに、安全な事業承継を実現するための生命線と言えるでしょう。

なぜ事業譲渡契約書が絶対に必要か

事業譲渡契約書を作成する理由は、主に以下の3つの側面に集約されます。

  1. 取引内容の「見える化」と明確化
    どの事業を、どの資産(店舗、機械、在庫、特許権など)と負債(買掛金、借入金など)を含めて、いくらで売買するのかを、誰が見ても分かる形で具体的に特定します。これにより、当事者間の「そんなつもりじゃなかった」という認識の齟齬を根本から防ぎます。
  2. 約束を法的に守らせる「拘束力」の担保
    契約内容に法的な拘束力を持たせることで、一方的な契約の不履行や条件変更を防ぎます。万が一、相手方が約束を守らなかった場合、この契約書を根拠として損害賠償請求などの法的な対抗措置を講じることが可能になります。
  3. 予期せぬトラブルへの「保険」となるリスク分配
    事業には、帳簿に載っていない「簿外債務」や、後から発覚する法的問題など、見えないリスクが潜んでいることがあります。表明保証や補償条項を設けることで、こうした万が一のリスクが発生した場合に、売り手と買い手のどちらがどのように責任を負うのかを事前に明確に定めておきます。

【比較表】事業譲渡と株式譲渡の決定的な違い

M&Aには事業譲渡と似た手法として「株式譲渡」がありますが、両者は根本的に異なります。この違いを理解することが、事業譲渡契約書の重要性を知る上で不可欠です。

項目 事業譲渡 株式譲渡
譲渡対象 事業に関連する資産・負債・権利義務など(個別に選択) 会社の株式(経営権そのもの)
契約当事者 譲渡会社 ⇔ 譲受会社 譲渡会社の株主 ⇔ 譲受会社(または個人)
債務の承継 原則、契約で定めた範囲のみを承継(リスク遮断) 会社が持つ全ての債務を包括的に承継
許認可 譲受会社が新たに取得する必要がある 原則、会社に帰属するためそのまま承継される
消費税 課税対象資産(建物、機械、営業権など)に対して発生 株式は有価証券のため非課税

 

事業譲渡の最大の特徴は、譲り受ける資産や負債を個別に選べる柔軟性にあります。これにより、不要な資産や簿外債務といったリスクを引き継がずに済みます。しかしその反面、資産や契約を一つひとつ移転させる煩雑な手続きが必要となり、その手続きの土台となるのが、詳細に作り込まれた事業譲渡契約書なのです。

事業譲渡契約書に記載すべき全15項目【ひな形条文例と注意点】

事業譲渡契約書は、取引の安全性を確保するために多くの条項で構成されます。ここでは、一般的かつ最重要とされる15の項目を、それぞれの目的、記載例、そして見落としがちなチェックポイントと共に徹底解説します。

第1条:事業譲渡の合意

この条項の目的
契約の冒頭で、売り手(譲渡人)と買い手(譲受人)が、特定の事業を売買することに明確に合意した事実を宣言します。この契約全体の基本方針を示す、いわば「契約のタイトル」です。

記載例

譲渡人(以下「甲」という。)は、譲受人(以下「乙」という。)に対し、甲が営む〇〇事業(以下「本件事業」という。)を本契約の定めに従い譲渡し、乙はこれを譲り受けることに合意する。

【最重要】チェックポイント
契約書全体で使われる「譲渡人」「譲受人」「本件事業」といった用語の定義をここで行うため、正確な記載が求められます。

第2条:譲渡対象事業の特定

この条項の目的
どの事業を譲渡の対象とするのかを、事業内容、拠点、ブランド名などを用いて、第三者が見ても明確に識別できるように具体的に定義します。

記載例

本件事業とは、甲が〇〇県〇〇市〇〇町〇〇番地において運営する飲食店「△△(店舗名)」に関する一切の事業をいう。

【最重要】チェックポイント
範囲が曖昧だと、譲渡後に「このオンライン通販部門も含まれるはずだった」といった争いが生じます。複数の事業を営んでいる場合は、譲渡範囲を限定的に、かつ明確に記述する必要があります。

第3条:譲渡対象資産・負債の範囲

この条項の目的
事業譲渡の核心部分であり、最もトラブルになりやすい条項です。譲渡する資産と負債を具体的かつ網羅的にリストアップします。通常、契約書本文には概要を記載し、詳細は別紙として「資産目録」「負債目録」を添付します。

記載例

甲は乙に対し、譲渡日時点において本件事業に関して甲が有する、別紙1記載の資産(以下「譲渡資産」という。)を譲渡し、別紙2記載の負債(以下「譲渡負債」という。)を乙に承継させる。

  • 譲渡対象資産の例:
    • 有形固定資産(土地、建物、機械、車両、備品など)
    • 無形固定資産(特許権、商標権、ソフトウェア、のれん(営業権)など)
    • 棚卸資産(商品、製品、原材料など)
    • 流動資産(売掛金、有価証券など)
    • 賃借権、契約上の地位(取引先との契約など)
  • 譲渡対象負債の例:
    • 買掛金、未払金
    • 借入金(金融機関の個別同意が必要)
    • リース債務
    • 預り金(従業員の源泉所得税など)

【最重要】チェックポイント
目録に記載漏れがあると、原則としてその資産・負債は譲渡対象外と解釈されます。買収監査(デューデリジェンス)の結果を基に、専門家と相談しながら慎重に作成することが極めて重要です。

第4条:譲渡日(効力発生日)

この条項の目的
事業の支配権が売り手から買い手に正式に移転する日を明確に定めます。この日を基準に、事業から生じる収益や費用がどちらに帰属するかが決まります。

記載例

本件事業の譲渡日(以下「譲渡日」という。)は、西暦〇〇年〇月〇日とする。

【最重要】チェックポイント
通常は、後述する譲渡代金の決済日と同日に設定されます。この日までに、資産の名義変更や契約の承継手続きなどを完了させる必要があります。

第5条:譲渡価格と支払方法

この条項の目的
事業の対価として買い手が売り手に支払う金額、支払期日、支払方法(銀行振込など)を具体的に定めます。

記載例

乙は甲に対し、本件事業の譲渡対価として、金〇〇円を、譲渡日に、甲が別途指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。

【最重要】チェックポイント
契約締結から譲渡日までの間に、在庫の増減などで資産価値は変動します。そのため、譲渡日時点の純資産額を基準に最終的な価格を調整する「価格調整条項」を設けるのが一般的です。この計算方法を明確に定めておかないと、後で大きな争いになります。

第6条:従業員の処遇(労働契約の承継)

この条項の目的
譲渡対象事業に従事する従業員の労働契約を買い手が引き継ぐかどうか、引き継ぐ場合の条件などを定めます。従業員の生活に直結する非常にデリケートな条項です。

記載例

1. 甲は乙に対し、別紙3記載の従業員(以下「転籍対象従業員」という。)との間の労働契約を承継させるものとし、乙はこれを承継する。
2. 甲は、譲渡日までに、転籍対象従業員から本条の労働契約の承継について、書面による個別の同意を得るものとする。

【最重要】チェックポイント
事業譲渡では、従業員の転籍には一人ひとりからの個別の同意が法律上必要です。同意しない従業員は売り手の会社に残ります。転籍後の労働条件(給与、役職など)や、退職金の精算方法(売り手が精算するのか、買い手が引き継ぐのか)なども詳細に定める必要があります。

第7条:契約の移転手続き

この条項の目的
事業に必要な取引先との契約やオフィスの賃貸借契約などを、売り手から買い手に移転させるための手続きと、その責任の所在を定めます。

記載例

甲は、自己の責任と費用において、譲渡日までに、本件事業の遂行に必要な第三者との契約について、乙への承継に必要な当該第三者からの書面による承諾を取得するものとする。

【最重要】チェックポイント
多くの契約には「譲渡禁止特約」が付いています。契約相手方の承諾なしに勝手に権利を譲渡することはできません。重要な取引先の承諾が得られない場合、取引が頓挫するリスクもあるため、誰が責任を持って承諾を得るのかを明確にします。

第8条:善管注意義務

この条項の目的
契約締結日から事業譲渡日までの間、売り手は善良な管理者の注意をもって事業を運営し、その価値を下げないように努める義務を負うことを定めます。

【最重要】チェックポイント
この条項がないと、契約後に売り手が重要な資産を勝手に売却したり、不利な条件で新たな契約を結んだりして、買い手が譲り受ける事業の価値が毀損されるリスクがあります。「通常どおりの事業運営を行う」ことを約束させる重要な条項です。

第9条:競業避止義務

この条항の目的
売り手が、事業譲渡後も同じような事業を始めて買い手の競合となることを、一定の期間・地域で禁止する条項です。買い手が支払った「のれん(営業権)」の価値を守るために設けられます。

記載例

甲は、譲渡日から〇年間、〇〇県内において、本件事業と同一または類似の事業を、自ら行い、または第三者に行わせてはならない。

【最重要】チェックポイント
会社法第21条でも規定されていますが、契約で範囲をより具体的に定めるのが一般的です。期間、地域、対象事業の範囲が過度に広範だと、公序良俗に反し無効とされる可能性があるため、合理的な範囲で設定する必要があります。

第10条:表明保証

この条項の目的
売り手が、譲渡対象事業に関する特定の事項(例:財務諸表は正確、法的な紛争はない、許認可は有効など)が真実かつ正確であることを表明し、保証する条項です。

【最重要】チェックポイント
これは買い手にとってのリスクヘッジの要です。買収監査で発見できなかった隠れた問題(簿外債務、未払残業代など)が後から発覚した場合、表明保証違反として売り手に損害賠償を請求する根拠となります。何を保証させるかが、交渉の重要なポイントになります。

第11条:補償(損害賠償)

この条項の目的
表明保証違反やその他の契約上の義務違反があった場合に、相手方が被った損害を賠償するルールを定めます。

【最重要】チェックポイント
単に「損害を賠償する」だけでなく、請求できる期間(例:譲渡日から1年間)、賠償額の上限(例:譲渡価格の50%まで)や下限(例:損害額が100万円を超えた場合のみ)などを具体的に設定することが一般的です。ここも交渉の焦点となります。

第12条:公租公課の負担

この条項の目的
事業譲渡に伴って発生する税金(消費税、不動産取得税など)や公的な手数料を、どちらが負担するかを定めます。

【最重要】チェックPOINT
通常、譲渡対象資産にかかる消費税や不動産取得税は買い手が負担し、売り手の譲渡益に対する法人税は売り手が負担します。負担者を明確にしておかないと、予期せぬ税負担が発生し、トラブルの原因となります。

第13条:契約解除条項

この条項の目的
相手方に重大な契約違反があった場合や、事業譲渡の前提条件(例:重要な許認可の取得)が満たされない場合に、契約を解除できる条件を定めます。

【最重要】チェックポイント
どのような場合に契約を白紙に戻せるのかを具体的に列挙します。これにより、致命的な問題が発覚した際に、取引から撤退する権利を確保できます。

第14条:秘密保持義務

この条項の目的
事業譲渡の交渉過程や契約内容に関して得た相手方の情報を、第三者に漏洩しないことを当事者双方に義務付けます。

【最重要】チェックポイント
契約が成立しなかった場合や、契約終了後も一定期間、義務が存続するように定めるのが一般的です。情報漏洩は企業の信用問題に直結するため、非常に重要です。

第15条:合意管轄・準拠法

この条項の目的
万が一、契約に関して紛争が生じ、裁判になった場合に、どの裁判所で裁判を行うか(合意管轄裁判所)を定めます。

【最重要】チェックポイント
これを定めておかないと、相手方の所在地など、自社から遠方の裁判所で裁判を行わなければならなくなる可能性があります。自社の本店所在地を管轄する裁判所(例:東京地方裁判所)を指定するのが一般的です。

失敗しない!事業譲渡契約書の作成から締結までの全10ステップ

事業譲渡契約書の締結は、M&Aプロセスの中のクライマックスです。一般的には以下のステップで慎重に進められます。

  1. M&Aの検討・交渉開始
    売り手と買い手の経営トップ同士が面談し、事業譲渡の基本的な方向性やビジョンについて話し合います。
  2. 秘密保持契約(NDA)の締結
    詳細な企業情報を開示する前に、まず秘密保持契約を締結します。これにより、交渉内容や開示情報が外部に漏れることを防ぎます。
  3. 基本合意書(MOU)の締結
    譲渡対象事業、おおよその譲渡価格、今後のスケジュールなど、この時点での基本的な合意事項を書面にまとめます。多くの場合、法的拘束力はありませんが、買い手に一定期間、他の候補者と交渉しないことを約束させる「独占交渉権」を設定するのが一般的です。
  4. デューデリジェンス(DD)の実施
    買い手が、弁護士や会計士、税理士などの専門家チームを編成し、売り手の事業について詳細な調査(買収監査)を行います。財務状況、法務リスク、税務リスクなどを徹底的に洗い出します。
  5. 最終条件交渉
    デューデリジェンスの結果、もし問題点が発見されれば、それを基に譲渡価格の減額や、契約条件の変更など、最終的な交渉を行います。
  6. 事業譲渡契約書の作成・レビュー
    最終交渉で合意した内容を基に、事業譲渡契約書のドラフト(草案)を作成します。通常は買い手側の弁護士が作成し、それを売り手側の弁護士がレビューし、修正提案を重ねて内容を詰めていきます。
  7. 取締役会での承認
    会社法上、事業の重要な一部または全部を譲渡・譲受する際には、原則として双方の会社で取締役会の承認決議が必要です。
  8. 事業譲渡契約書の締結
    双方が契約書の最終案に合意したら、両社の代表者が署名(または記名押印)し、契約が正式に成立します。
  9. 株主総会の特別決議(必要な場合)
    売り手側において、譲渡する資産の帳簿価額が会社の総資産額の5分の1を超える場合など、一定の条件下では、株主総会での特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)が必要となります。
  10. 譲渡実行(クロージング)
    契約書で定めた「譲渡日」に、譲渡代金の決済と、資産・負債の名義変更などの移転手続きをすべて完了させます。これで事業譲渡は完了です。

見落とすと危険!事業譲渡契約書の3つの重要注意点

契約書を作成・締結する際には、法務・税務上の影響を考慮し、以下の3点に特に注意する必要があります。

1. 事業譲渡契約書に必要な「印紙税」

事業譲渡契約書は、印紙税法上の課税文書に該当する場合があり、契約書に収入印紙を貼付する必要があります。

契約内容 該当する文書の種類 印紙税額
不動産の譲渡を含む場合 第1号文書「不動産の譲渡に関する契約書」 契約金額に応じて変動(例:1億円超5億円以下で10万円)
のれん(営業権)の譲渡を含む場合 第1号文書「無体財産権の譲渡に関する契約書」 契約金額に応じて変動
上記を含まない場合 第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」 一律4,000円

 

ただし、ここで重要なポイントがあります。電子契約サービスを利用して電子データで契約書を締結した場合、物理的な文書の交付がないため、印紙税は不要(非課税)となります。契約金額が大きい場合は、数十万円のコスト削減につながるため、電子契約の活用も積極的に検討する価値があります。

2. 個人事業主・法人成りの場合の特有のポイント

個人事業主が事業を譲渡する場合や、個人事業から法人成りする際に事業譲渡のスキームを利用する場合にも、契約書は同様に重要です。

  • 屋号の引き継ぎと債務のリスク: 買い手が屋号を引き続き使用する場合、その旨を契約書に明記します。注意点として、商法上、屋号を続用する買い手は、売り手の事業上の債務を弁済する責任を負う可能性があります(商法第17条)。この責任を免れるためには、「債務は引き継がない」旨を契約書に明記し、かつ、その旨を登記する必要があります。
  • 税金の種類: 譲渡によって得た利益は、法人税ではなく「譲渡所得」として所得税の課税対象となります。また、課税事業者であれば、課税対象資産の譲渡に対して消費税も発生します。

3. 専門家(弁護士など)への相談は必須

事業譲渡契約書を、インターネット上のひな形だけで完成させることは絶対に避けてください。ひな形はあくまで一般的なサンプルであり、個別の取引の実態や、デューデリジェンスで発見されたリスクを反映していません。

自社に不利な条項が含まれていたり、必要な条項が欠けていたりすると、将来的に数千万円、数億円規模の損失を被るリスクがあります。契約書の作成・レビューの段階では、必ずM&Aや会社法務に精通した弁護士に相談し、専門的なリーガルチェックを受けることが、自社を守るための最低限の防衛策です。

事業譲渡契約書に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 事業譲渡に契約書は絶対に必要ですか?

A1. はい、必須です。
事業譲渡契約書は、譲渡する資産の範囲や価格、従業員の処遇など、重要な合意内容を法的に確定させ、後のトラブルを防ぐために不可欠です。契約書がなければ、口約束となり、万が一の際に自社の権利を守ることができません。

Q2. 事業譲渡の最大のメリット・デメリットは何ですか?

A2. メリットは「必要な事業のみ承継できる柔軟性」、デメリットは「手続きの煩雑さ」です。

  • メリット(買い手): 必要な資産・負債だけを選んで承継でき、簿外債務などの潜在的リスクを遮断しやすい点です。
  • デメリット(買い手): 許認可の再取得が必要な場合が多く、資産や契約の移転手続きが個別に発生するため、時間と手間がかかる点です。

Q3. 事業譲渡で従業員の扱いはどうなりますか?

A3. 従業員一人ひとりからの「個別の同意」が必要です。
会社分割とは異なり、事業譲渡では労働契約は自動的に承継されません。買い手の会社に従業員を転籍させるには、対象となる従業員から個別に同意を得る必要があります。従業員は転籍を拒否し、売り手の会社に留まる権利も持っています。

Q4. 契約書作成の費用はどれくらいかかりますか?

A4. 依頼する弁護士や案件の複雑さによりますが、数十万円から数百万円が目安です。
M&A専門の弁護士に依頼する場合、タイムチャージ制(時間給)や、譲渡価格に応じた手数料体系など様々です。しかし、将来のリスクを考えれば、これは必要不可欠な投資と言えます。複数の事務所から見積もりを取ることをお勧めします。

Q5. 譲渡後に契約書の内容と違う問題が発覚したらどうなりますか?

A5. 「表明保証」違反として、損害賠償を請求できる可能性があります。
契約書に定めた表明保証条項に違反する事実(例:開示されていなかった訴訟リスクなど)が発覚した場合、買い手は売り手に対して、契約書に定められた補償条項に基づき、損害の賠償を求めることができます。そのためにも、表明保証と補償の条項を詳細に作り込んでおくことが重要です。

まとめ:事業譲渡契約書はM&A成功の礎

この記事では、事業譲渡契約書の重要性から、記載すべき全15条項の詳細、作成から締結までの流れ、そして印紙税や専門家への相談といった重要注意点まで、網羅的に解説しました。

  • 事業譲渡契約書は、取引内容を明確化し、トラブルを防ぐための生命線である。
  • 全15の必須項目には、それぞれ重要な役割とチェックポイントが存在する。
  • 作成プロセスは専門家(弁護士)と共に行い、デューデリジェンスの結果を反映させることが不可欠。
  • ひな形はあくまで参考とし、個別の取引内容に合わせたカスタマイズが絶対条件。

事業譲渡契約書は、単なる形式的な書類ではありません。それは、当事者双方の権利を守り、事業という大切な資産を円滑かつ安全に次世代へ引き継ぐための、最も重要な「成功の設計図」なのです。M&Aという重要な経営判断を成功させるためにも、本記事で解説したポイントを参考に、万全の準備で臨んでください。

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