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M&Aスキームとは?株式譲渡・事業譲渡など種類とメリットを解説

M&Aスキームとは?全種類を一覧と図で比較解説

M&A(企業の合併・買収)を成功させるためには、自社の目的や状況に最も適した「スキーム」を選択することが不可欠です。M&Aスキームとは、M&Aを実行するための具体的な手法や法的な枠組みのことであり、いわばM&Aの成否を分ける「設計図」とも言えます。

スキームの選択を誤ると、想定外の多額な税金が発生したり、手続きが複雑化して頓挫したりするリスクがあります。この記事では、代表的なM&Aスキームの全種類を一覧表と図で分かりやすく比較し、それぞれのメリット・デメリット、手続き、税務まで徹底的に解説します。

本記事では各スキームの“典型”を整理しています。実務では、許認可・税務・契約関係の個別事情で結論が変わるため、最終判断は専門家と個別検討が必要です。

M&Aスキーム一覧比較表

まずは、主要なM&Aスキームの特徴を一覧表で比較し、全体像を把握しましょう。各スキームの詳細は後ほど詳しく解説します。

買収・統合のスキーム比較

比較項目 株式譲渡 第三者割当増資 株式交換・株式移転 合併
概要 既存株主から株式を買い取り経営権を取得 会社が新たに発行する株式を引き受け経営権を取得 対象会社を100%子会社化する 複数の会社を1つの法人格に統合
取引対象 会社(株式) 会社(新株) 会社(株式) 会社(法人格)
手続き 比較的簡便 中程度 複雑 非常に複雑
許認可引継 原則可能 原則可能 原則可能 原則可能
簿外債務 引き継ぐ 引き継ぐ 引き継ぐ 引き継ぐ
対価 現金 現金 株式 株式・現金等
売り手の税金 譲渡所得税 (約20%) 課税なし※ 繰延可能 繰延可能
買い手の税金 課税なし 課税なし 課税なし 課税なし

※売り手株主個人に直接の対価は入らないため。

事業譲渡・会社分割のスキーム比較

比較項目 事業譲渡 会社分割
概要 会社の一部の事業を売買 会社の一部の事業を別会社として切り出す
取引対象 事業(資産・負債・契約等) 事業(権利義務)
手続き 煩雑(個別承継) 比較的簡便(包括承継)
許認可引継 再取得が必要 引き継げる場合がある
簿外債務 引き継がない 引き継ぐ可能性あり
対価 現金 株式
売り手の税金 法人税 (約30%) 繰延可能
買い手の税金 消費税・不動産取得税等 不動産取得税等

M&AスキームとはM&Aの手法・枠組みのこと

改めて、M&Aスキームとは、M&Aの目的を達成するための具体的な手法・法的な枠組みを指します。売り手企業と買い手企業がどのような形で会社や事業を取引するのか、その「やり方」を定めたものです。

株式を売買するのか、事業だけを切り出すのか、会社ごと一つになるのか。どのスキームを選択するかによって、手続きの複雑さ、資金の動き、従業員の処遇、そして最も重要な税金の額が大きく変わってきます。

M&Aにおけるスキーム選択の重要性

なぜスキーム選択が重要なのでしょうか。それは、M&Aの目的(ゴール)に最短・最適なルートで到達するための羅針盤となるからです。

例えば、「後継者不在のため、会社を丸ごと誰かに引き継いでほしい」という目的であれば、手続きが簡単な「株式譲渡」が適しているかもしれません。一方で、「複数の事業のうち、不採算部門だけを整理したい」という目的であれば、「事業譲渡」や「会社分割」が候補となります。

目的と合わないスキームを選択してしまうと、「不要な資産まで引き継いでしまった」「想定外の税金で手元に残る資金が大幅に減った」「従業員の同意が得られず計画が進まない」といった失敗に繋がりかねません。

M&Aと買収・合併・提携との違い

M&Aという言葉は広く使われますが、その中には様々な関係性が含まれます。

  • M&A(Mergers and Acquisitions): 企業の「合併」と「買収」を合わせた言葉で、最も広義な概念です。
  • 買収: ある企業が他の企業の株式や事業を買い取り、経営権を取得することです。「株式譲渡」や「事業譲渡」は買収の代表的なスキームです。
  • 合併: 2つ以上の会社が契約によって1つの会社になることです。
  • 提携: 複数の企業が互いの独立性を保ちながら、特定の目的のために協力関係を結ぶことです。「業務提携」や「資本提携」がこれにあたります。

M&Aスキームは、これらの買収・合併・提携といった目的を実現するための具体的な「手段」と理解すると良いでしょう。

【類型別】M&Aスキームの全体像

M&Aスキームは、その目的や取引対象によって大きく3つの類型に分類できます。

会社の支配権を移転するスキーム(買収)

会社の経営権(議決権の過半数)を移転させることを目的としたスキームです。会社そのものを取引の対象とします。

  • 株式譲渡
  • 第三者割当増資
  • 株式交換・株式移転

特定の事業を移転するスキーム

会社全体ではなく、会社が営む事業の一部または全部を取引の対象とするスキームです。

  • 事業譲渡
  • 会社分割

複数の会社を統合するスキーム(組織再編)

2つ以上の会社を法的に1つの会社に統合するスキームです。法的な手続きが複雑なため、組織再編行為とも呼ばれます。

  • 合併

それでは、ここから各スキームについて、図を交えながら詳しく見ていきましょう。


M&Aスキーム①:株式譲渡

株式譲渡のイメージ図

株式譲渡は、売り手企業の株主が保有する株式を買い手企業に売却することで、経営権を移転させる手法です。特に中小企業のM&Aにおいて最も頻繁に用いられる、いわば「王道」のスキームです。

株式譲渡のメリット

手続きが比較的簡便

株式譲渡は、株主と買い手の間で「株式譲渡契約」を締結し、株主名簿を書き換えることが基本的な手続きです。後述する事業譲渡や合併などに比べて、会社法上の手続きが少なく、短期間で実行できる点が大きなメリットです。

会社を包括的に承継できる

買い手は株式を取得することで、売り手企業をそのままの形で引き継ぎます。資産や負債、従業員との雇用契約、取引先との契約関係なども原則としてそのまま維持されます。個別に契約を巻き直す手間がかかりません。

許認可をそのまま引き継げる可能性が高い

事業に必要な許認可は、法人に対して与えられていることがほとんどです。株式譲渡では法人格がそのまま維持されるため、許認可を再取得することなく、事業を継続できる可能性が高いです。

株式譲渡のデメリット

不要な資産や簿外債務も引き継ぐリスク

会社を丸ごと引き継ぐため、買い手にとって不要な資産(不動産や有価証券など)も一緒に承継することになります。さらに最も注意すべきは、貸借対照表に記載されていない「簿外債務」や「偶発債務」(未払残業代、将来の訴訟リスクなど)も引き継いでしまうリスクです。このリスクを洗い出すために、デューデリジェンス(買収監査)が極めて重要になります。

買収資金が高額になりやすい

会社全体の価値(株式価値)を買い取るため、事業譲渡に比べて買収資金は高額になる傾向があります。買い手は多額の現金を準備する必要があります。

株式譲渡の手続きと流れ

  1. トップ面談・基本合意契約の締結: 売り手と買い手の経営者同士で面談し、大筋の条件で合意(基本合意)。
  2. デューデリジェンス(DD)の実施: 買い手が弁護士や会計士を動員し、売り手企業の財務・法務・事業内容を詳細に調査。
  3. 最終条件交渉: DDの結果を踏まえ、最終的な譲渡価格や条件を交渉。
  4. 株式譲渡契約(SPA)の締結: 最終合意内容を盛り込んだ契約書を締結。
  5. クロージング: 買い手から売り手株主への対価の支払いと、株券(またはそれに代わるもの)の引き渡し、株主名簿の書き換えを行う。

株式譲渡にかかる税金

  • 売り手(個人株主): 株式の売却によって得た利益(譲渡所得)に対して、所得税・住民税・復興特別所得税を合わせて約20.315%が課税されます。
  • 買い手: 原則として課税されません。

M&Aスキーム②:事業譲渡

事業譲渡のイメージ図

事業譲渡は、会社の一部または全部の「事業」を売買対象とする手法です。株式ではなく、事業を構成する資産(店舗、設備、在庫、知的財産権など)や負債、契約関係などを個別に選別して売買します。

事業譲渡のメリット

対象事業を限定して承継できる

買い手は必要な事業や資産だけを選んで買収できます。売り手も、不採算事業だけを切り離して主力事業に集中する、といった戦略的な活用が可能です。

簿外債務を引き継ぐリスクがない

事業譲渡は、承継する資産や負債を契約で個別に特定します。そのため、株式譲渡と異なり、意図しない簿外債務を引き継いでしまうリスクを遮断できる点が、買い手にとって最大のメリットです。

事業譲渡のデメリット

手続きが煩雑になるケースが多い

資産や負債、契約などを個別に移転させる必要があるため、手続きが非常に煩雑です。

  • 不動産の名義変更登記
  • 従業員の転籍(一度退職し、再雇用する手続きと同意が必要)
  • 取引先との契約の再締結

など、関係各所の同意や手続きが多岐にわたるため、時間とコストがかかります。

許認可の再取得が必要

許認可は法人格に紐づいているため、事業を承継した買い手は、原則として許認可を新たに取得し直す必要があります。許認可の種類によっては取得に時間がかかり、その間事業が停止するリスクもあります。

競業避止義務が発生する

会社法により、売り手企業は原則として、譲渡した事業と同一の市町村および隣接市町村において、20年間は同一の事業を行ってはならないという「競業避止義務」を負います。

事業譲渡の手続きと流れ

  1. 基本合意契約の締結: 売買対象とする事業の範囲や価格などを大筋で合意。
  2. 取締役会決議・株主総会特別決議: 売り手・買い手双方で必要な社内決議を行う。特に売り手側は、事業の全部譲渡や重要な一部の譲渡の場合、株主総会の特別決議が必要です。
  3. 事業譲渡契約の締結: 移転する資産・負債・契約などを明記した契約書を締結。
  4. クロージング: 契約に基づき、資産・負債の引き渡し、従業員の転籍、対価の支払いなどを実行。
  5. 各種名義変更手続き: 不動産登記や許認可申請など、個別の移転手続きを行う。

事業譲渡にかかる税金

  • 売り手: 事業の売却益に対して法人税(実効税率約30%)が課税されます。また、課税資産(建物、機械など)の譲渡には消費税もかかります。
  • 買い手: 課税資産の取得に対して消費税がかかります(仕入税額控除で相殺可能)。不動産を取得した場合は不動産取得税、登録免許税も課税されます。

M&Aスキーム③:会社分割

会社分割のイメージ図

会社分割は、会社が営む事業に関する権利義務の一部または全部を、別の会社に包括的に承継させる手法です。事業譲渡が「個別承継」であるのに対し、会社分割は「包括承継」である点が大きな違いです。組織再編行為の一つとされます。

会社分割のメリット

包括承継のため個別の手続きが不要

事業に関する資産、負債、契約関係などがまとめて包括的に移転します。そのため、事業譲渡のように取引先から個別に同意を得たり、従業員と再契約を結んだりする必要がなく、手続きを簡素化できます。

対価を株式にできる

買い手(承継会社)は、事業を承継する対価として、現金の代わりに自社の株式を交付できます。これにより、手元資金がなくてもM&Aを実行できる可能性があります。

会社分割のデメリット

手続きが複雑で時間がかかる

会社法に定められた組織再編行為であるため、株主総会での承認や債権者保護手続きなど、厳格な法的手続きが必要です。計画から実行まで数ヶ月単位の時間がかかります。

簿外債務を引き継ぐリスクがある

包括承継であるため、分割対象事業に関連する簿外債務も引き継いでしまうリスクがあります。デューデリジェンスの重要性は株式譲渡と同様です。

会社分割の種類:吸収分割と新設分割

吸収分割とは

既存の会社(買い手企業)が、売り手企業の事業を承継するスキームです。M&Aでよく利用されるのはこちらです。

新設分割とは

売り手企業が事業を切り出し、その事業を承継させるための新しい会社を設立するスキームです。主にグループ内の組織再編などで活用されます。

会社分割の手続きと流れ

  1. 会社分割契約の締結/会社分割計画の作成
  2. 事前開示書類の備置
  3. 債権者保護手続き(官報公告・個別催告)
  4. 株主総会の承認決議(特別決議)
  5. 会社分割の効力発生・登記
  6. 事後開示書類の備置

会社分割にかかる税金

会社分割は、税制上の「適格要件」を満たすかどうかで課税関係が大きく異なります。

  • 適格分割の場合: 資産・負債は簿価で引き継がれ、譲渡損益は発生しません。課税は将来に繰り延べられます。
  • 非適格分割の場合: 資産・負債は時価で譲渡されたものとみなされ、譲渡益に対して法人税が課税されます。

M&Aスキーム④:合併

合併のイメージ図

合併は、2つ以上の会社が契約によって法的に1つの会社になる手法です。権利義務のすべてが包括的に承継され、最も強力な統合効果が期待できるスキームです。

合併のメリット

複数の会社を一つに統合しシナジー効果を最大化できる

法人格が一つになるため、重複する部門(管理部門など)の削減によるコストカットや、技術・ノウハウの完全な融合など、M&Aによるシナジー効果を最も発揮しやすいスキームと言えます。

包括承継のため個別の手続きが不要

会社分割と同様、資産・負債・契約関係などが包括的に承継されるため、個別の移転手続きは不要です。

合併のデメリット

統合作業(PMI)の負担が大きい

別々の企業文化や人事制度、ITシステムなどを一つに統合するプロセス(PMI: Post Merger Integration)は非常に困難を伴います。PMIがうまくいかないと、現場の混乱や従業員の離反を招き、期待したシナジーが得られない結果となります。

手続きが複雑で時間がかかる

合併も組織再編行為であり、会社分割と同様に債権者保護手続きや株主総会決議など、複雑で時間のかかる法的手続きが必要です。

合併の種類:吸収合併と新設合併

吸収合併とは

一方の会社(存続会社)がもう一方の会社(消滅会社)の権利義務すべてを承継し、消滅会社は解散するスキームです。実務上、合併のほとんどがこの吸収合併です。

新設合併とは

合併する全ての会社が解散し、同時に新しい会社を設立して、その新設会社にすべての権利義務を承継させるスキームです。

合併の手続きと流れ

手続きは会社分割と類似しており、合併契約の締結、債権者保護手続き、株主総会の承認などを経て、効力発生日に登記を行います。

合併にかかる税金

合併も会社分割と同様に「適格要件」があり、それによって課税関係が異なります。

  • 適格合併の場合: 資産・負債は簿価で引き継がれ、課税は繰り延べられます。
  • 非適格合併の場合: 消滅会社の資産・負債は時価評価され、含み益に対して法人税が課税されます。

M&Aスキーム⑤:株式交換・株式移転

株式交換・株式移転のイメージ図

株式交換・株式移転は、完全親子会社関係(100%親子会社)を創設するための組織再編スキームです。

株式交換・株式移転のメリット

買収資金(現金)が不要

買い手企業は、売り手企業の株主に対し、対価として自社の株式を交付します。そのため、手元に多額の現金がなくても大規模な買収が可能になります。

少数株主を整理し完全子会社化できる

株主総会の特別決議で可決されれば、反対する株主の株式も強制的に買い手企業の株式と交換できます。これにより、迅速かつ確実に100%子会社化を達成できます。

買収後も子会社の独立性を維持できる

買収後も子会社は別法人として存続するため、独自の経営方針や企業文化を維持しやすいというメリットがあります。合併に比べてPMIの負担が軽減されます。

株式交換・株式移転のデメリット

株主構成が変化し経営に影響が出る可能性

買い手企業は対価として新株を発行するため、売り手企業の株主が新たな株主となります。これにより、既存株主の持株比率が低下し、経営の意思決定に影響を与える可能性があります。

手続きが複雑で時間がかかる

これらも組織再編行為であり、債権者保護手続き(※)や株主総会決議など、複雑な法的手続きが必要です。
※株式交換では原則不要ですが、対価が株式以外の場合などに必要となります。

株式交換と株式移転の違い

株式交換とは

既存の会社(買い手)を完全親会社とし、対象会社(売り手)を完全子会社とするスキームです。

株式移転とは

新たに完全親会社となる会社を設立し、その新設会社に既存の会社の株式をすべて取得させるスキームです。持株会社(ホールディングス)体制への移行などで利用されます。

株式交換・株式移転の手続きと流れ

法に定められた厳格な手続き(契約締結、事前開示、株主総会承認など)に沿って進められます。

株式交換・株式移転にかかる税金

こちらも「適格要件」を満たせば、売り手企業の株主の株式譲渡益に対する課税は、将来その株式を売却するまで繰り延べられます。


M&Aスキーム⑥:第三者割当増資

第三者割当増資のイメージ図

第三者割当増資は、会社が新たに株式を発行し、それを特定の第三者(買い手)に引き受けてもらうことで、資金調達や経営権の移転を行う手法です。

第三者割当増資のメリット

会社に資金が入り財務基盤が強化される

買い手が支払った対価は、既存株主ではなく会社に入ります。これにより、会社の資本が増強され、財務体質の改善や新規事業への投資が可能になります。

既存株主への影響を抑えながら経営権を移転できる

株式譲渡と異なり、既存株主は株式を売却しません。会社の経営権を維持したまま、外部から資本とパートナーを受け入れることができます。資本提携の手段としてよく用いられます。

第三者割当増資のデメリット

既存株主の持株比率が低下する

新たに株式が発行されるため、既存株主の持株比率が希薄化します。これにより、1株あたりの価値が下落したり、議決権割合が低下したりする可能性があります。そのため、株主への丁寧な説明が不可欠です。

売り手株主は直接現金を得られない

払い込まれた資金は会社に入るため、オーナー経営者などが引退のために現金を得たい(創業者利潤を得たい)という目的には適していません。

第三者割当増資の手続きと流れ

  1. 募集事項の決定(取締役会決議など)
  2. 株主への通知または公告
  3. 引受希望者への通知・申込
  4. 割当の決定・通知
  5. 出資金の払込み
  6. 変更登記

第三者割当増資にかかる税金

  • 引き受けた側(買い手): 課税されません。
  • 発行した側(売り手企業): 払い込まれた金銭は資本金等となるため、法人税は課税されません。
  • 既存株主: 課税されません。

その他のM&A関連スキーム

上記以外にも、特定の目的で利用される様々なスキームが存在します。

  • 資本提携・業務提携: 経営権の移転を伴わず、企業同士が協力関係を築く手法。第三者割当増資は資本提携の手段としてよく用いられます。
  • TOB(株式公開買付け): 上場企業の株式を、市場外で「価格・期間・株数」を公告して買い付ける手法。
  • MBO(マネジメント・バイアウト): 経営陣が自社の株式や事業を買い取って独立する手法。
  • EBO(エンプロイー・バイアウト): 従業員が自社の株式や事業を買い取る手法。
  • LBO(レバレッジド・バイアウト): 買い手が、売り手企業の資産や将来のキャッシュフローを担保に資金調達して買収する手法。
  • スクイーズアウト(少数株主排除): 特定の株主(主に親会社)が、他の少数株主から強制的に株式を買い取り、100%の支配権を確立する手法。

【目的別】最適なM&Aスキームの選び方

どのスキームを選ぶべきか、自社の目的に合わせて考えてみましょう。

会社全体を売却・買収したい場合

株式譲渡が第一候補。手続きが比較的簡便で、会社を丸ごと引き継げます。完全子会社化を目指すなら株式交換も選択肢になります。

一部の事業のみを売却・買収したい場合

事業譲渡または会社分割。必要な事業だけを切り離すことができます。

簿外債務のリスクを遮断したい場合

事業譲渡が最も有効です。承継する資産・負債を限定できるため、買い手のリスクを最小化できます。

許認可を円滑に引き継ぎたい場合

株式譲渡が最適です。法人格が変わらないため、許認可の再取得が不要なケースが多いです。

買収資金を抑えたい・対価を株式にしたい場合

株式交換、会社分割、合併などの組織再編スキームが候補となります。買い手は自社株を対価にできるため、現金の支出を抑えられます。

後継者問題を解決したい場合

→ オーナー経営者が創業者利潤を得て引退する場合は株式譲渡。経営陣が会社を引き継ぐ場合はMBOが考えられます。

M&Aスキーム選択で考慮すべき3つのポイント

最適なスキームを選択するには、専門的な観点からの多角的な検討が必要です。特に重要なのが以下の3点です。

税務:誰に、何の税金が、いくらかかるか

スキームによって、税金を支払う人(株主か会社か)、税金の種類(所得税か法人税か)、税率が全く異なります。株式譲渡なら税率約20%ですが、事業譲渡なら約30%です。税負担を最小化するタックスプランニングはスキーム選択の最重要課題です。

法務:会社法上の手続きと期間

株主総会の特別決議が必要か、債権者保護手続きが必要かなど、スキームごとに法的な手続きは大きく異なります。手続きが複雑なほど時間とコストがかかるため、M&Aのスケジュールにも影響します。

会計:のれんの扱いや資産・負債の評価

M&Aでは、買収価格と売り手企業の純資産額との差額が「のれん」として買い手企業の資産に計上されます。この「のれん」の会計処理(償却期間など)は、買収後の買い手企業の業績に大きな影響を与えます。

M&Aスキームに関するよくある質問

中小企業のM&Aで最も用いられるスキームは?

株式譲渡が圧倒的に多く用いられます。手続きが他のスキームに比べてシンプルで分かりやすく、売り手オーナーの税負担も比較的軽いことが理由です。

M&Aにはどんな3つの類型がありますか?

取引対象によって、①会社の支配権を移転するスキーム(株式譲渡など)、②特定の事業を移転するスキーム(事業譲渡など)、③複数の会社を統合するスキーム(合併など)の3つに大別できます。

M&Aの対価は現金以外でも可能ですか?

はい、可能です。株式交換や合併などの組織再編スキームでは、買い手企業の株式を対価とすることが一般的です。これを「株式対価M&A」と呼びます。

従業員の雇用契約はどうなりますか?

スキームによって異なります。

  • 株式譲渡、合併、会社分割(包括承継): 雇用契約は原則としてそのまま買い手企業に引き継がれます。
  • 事業譲渡(個別承継): 従業員は一度売り手企業を退職し、買い手企業と新たに雇用契約を結び直す「転籍」という形になります。従業員本人の個別同意が必要です。

まとめ:最適なM&Aスキームの選択は専門家へ相談を

M&Aスキームにはそれぞれ一長一短があり、「このスキームが絶対に正しい」という唯一の正解はありません。自社の目的、状況、そして相手企業の意向を総合的に考慮し、税務・法務・会計の観点から最も有利な手法を選択することが、M&A成功の鍵となります。

スキームの選択は、高度な専門知識と経験が求められる非常に複雑なプロセスです。安易な自己判断は、後に大きなトラブルや想定外の損失を招く原因となります。M&Aを検討する際は、必ずM&A仲介会社、公認会計士、弁護士といった専門家に早期に相談し、自社にとって最適な「設計図」を描くことから始めましょう。


免責事項

本記事は、M&Aスキームに関する一般的な情報提供を目的としており、法務、税務、会計に関する具体的な助言を提供するものではありません。個別の案件については、必ず専門家にご相談ください。本記事の情報に基づいて生じたいかなる損害についても、当方は一切の責任を負いかねます。

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